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高輝度白色LEDポジションランプの製作
'01/09/16初版,'04/11/27更新

[はじめに]

 PIAAさんの「コバルトスーパーHIDバルブ」を取り付けたことにより、これまでにない蒼白の光を手に入れることができました。しかし、困ったことに、ハイビームの中のポジションランプが、何となく黄色っぽく浮いて見えるようになってしまいました。

 ポジションランプは、既にPIAAさんの「エクストリームホワイト」に交換していたのですが、職人としては、一度気になり始めると、いつまで経っても気になって仕方がありません。こうなったら、とことん白い光を追求するしかありません!

 そこで、より白い光を得るために、日本が世界に誇る発明である(?)高輝度白色LEDを組み込むことにしました。

[作製方法]

 白い光を放つ光源として、日亜化学さんの高輝度白色LED(NSPW500BS)を使います。φ5の大きさで、5,600mcd(カンデラ;輝度を表す単位)の光量があります。秋葉原のジャンクショップで、1個380円で売られていました。(700円で売っている店もありましたが・・・)(*1)

 定格電圧は3.6Vなので、抵抗か定電流ダイオードで電圧を調整しないといけないのですが、素子を載せるスペースが無さそうなので、少し手抜きをして、4個を直列に接続することにしました。

 一つ問題となるのは、純正のウェッジ球のコネクタにどのようにきちんと固定するかです。ウェッジ球を上下に切断して下半分をベースとすることも考えましたが、結局はプリント基板を作製することにしました。

 *1 2001年9月16日時点の価格

[写真1]
white_led01.jpg
  • 今回作製したプリント基板です。(写真1)
    (上半分です。下半分は別の基板です。何の基板かはヒミツです)
  • プリント基板は、サンハヤトさんのキットを使うと比較的簡単に作製することができます。
  • Adobe Illustratorでマスクパターンをデザインし、写像反転してからOHPシートに印刷します。
  • 太陽光の下でフォトレジスト基板を感光させ、素早く現像します。
  • エッチングして不要な銅を取り除くと、プリント基板の出来上がりです。
 
[写真2]
white_led02.jpg
  • プリント基板を切り出したものです。(写真2)
  • 上側の円盤状の基板は、LEDを取り付けるためのベースとなります。(φ15)
  • 下側の2枚の基板は、ウェッジ球用のコネクタに接続するための接点となります。(9mm×12mm)
  • 写真右下は、プリント基板のマスクパターンです。
 
[写真3]
white_led03.jpg
  • 作製したLEDポジションランプを前から見たものです。(写真3)
  • 円盤状の基板の表側には、ステンレステープを貼り、リフレクターとしての役割をさせています。
 
[写真4]
white_led04.jpg
  • LEDポジション球を後から見たものです。(写真4)
  • まず、接点となる基板2枚を重ね合わせ、瞬間接着剤で固定します。
  • つぎに、円盤状の基板にT字型になるように瞬間接着剤で仮止めし、さらにハンダ付けをしてしっかり固定します。
 
[写真5]
white_led05.jpg
  • 白色LEDは指向性が強いため、リフレクターを取り付けてみました。(写真5)
    (NSPW500BSの指向特性は20°)
  • リフレクターといっても、「タイコ釘」といって、釘の頭を隠すための化粧用の釘です。本体にぴったりの大きさです。
    (東急ハンズで発見しました)
  • 効果の程は・・・、逆に暗くなってしまったので外しました。

 写真は拡大されているため分かり辛いのですが、実物はもの凄く小さなものです。いくら手先が器用な職人とは言え(自分で言うか?)0xF9C7、量産するには厳しいものがあります。

[装着比較]

[写真6]
white_led06.jpg
  • 装着前の状態です。(写真6)
  • ポジション球は、PIAAさんのエクストリーム・ホワイトです。
  • 純正に比べれば、かなり明るく白いのですが、それでもHIDを点灯してしまうと黄色っぽく見えてしまいます。
 
[写真7]
white_led07.jpg
  • 装着後の状態です。(写真7)
  • ロービーム側はエクストリーム・ホワイトのままです。白色LEDとの色調の違いは明らかです。

[インプレッション]

[写真8]
white_led08.jpg
  • 夜のフロントマスクです。(写真8)
    (写真は羽田ビッグバード出発ロビー前)

 黄色っぽい色調が無くなり、白を基調としたクールな感じになりました。

 高輝度白色LEDの単価がまだ高いため、アフターパーツのウェッジ球と比べるとかなり割高になってしまいますが、球切れもありませんし消費電力は僅か0.24Wですから、コストパフォーマンスはなかなかに高いと思います。

 後から知ったのですが、既に白色LEDを使ったポジションランプが市販化されていたようです。
  「が~ん!」0xF9D3
せっかく苦労して作ったのに・・・。まぁ、世の中こんなもんです。

[おわりに]

 本作品の製作にあたって、そもそもポジション球に白色LEDを使うというアイデアは、偶然お会いすることができた「KENYA」さんと「てつぢ」さんからいただきました。どうもありがとうございました!

[おまけ] ~「豪華V6仕様」の製作~

 先日、晴海のオート○ェーブさんに、市販製品を偵察(?)しに行って来ました。
(やはり気になったもので・・・)

 ポジションランプ1個相当に、LED1個が使われていました。その場にサンプル品がディスプレイしてあり、明るさを確認することができました。やはり、LED1個だと、明るさ的にちょっと厳しいかも知れません。
(しかも、LED2個セットで、定価2,000円。部品原価を知っている人からみると・・・)

 ということで、市販製品には絶対に負けないよう、「直列4気筒」ではなく、「V型6気筒」を製作することにしました。

[写真9]
white_led09.jpg
  • 調子に乗って、さらなるバージョンアップを図りました。
  • 6個もの白色LEDを使った、「豪華V6仕様」です。(写真9)
  • 片バンク3個のLEDに、12Vを掛けています。
  • 若干オーバードライブ気味ですが、最大電圧は4.0Vなので大丈夫だと思います。

 「豪華V6仕様」は、「直4仕様」に比べるともの凄く明るくなりました。LED数が1.5倍になっていることと、印加電圧が3.0Vから4.0Vになっていることで、感覚的には2倍以上明るいように見えます。市販されているLEDを1個だけ使ったポジションランプとは、明るさが明らかに違います。

 真正面から見ると、何となく新型CIMAのマルチプロジェクターヘッドランプのようです。

 命名、「フォースは我に、ミニミニマルチプロジェクターポジションランプ」。(長い)

 しかし、部品原価だけで片側2,280円。高い・・・。(*2)

 *2 2001年9月16日時点の価格

[おまけ2] ~「改良型豪華V6仕様」の製作~

 やはり、4.0Vはオーバードライブのようでした。装着後2日で素子が燃え尽きてしまいました。どうりで明るい訳です。0xF9C7
(アネストさん、ゴメンなさい!)

 ここは初心に戻り、手抜きをせず、きちんと抵抗を入れることにしました。

[写真10]
white_led10.jpg
  • 「改良型豪華V6仕様」です。(写真10)
  • 基板上は超過密状態で抵抗を入れるスペースが無いため、接点上に斜めに抵抗(82Ω)を入れました。
  • これでLEDに掛かる電圧は、1個あたり約3.5Vになります。
 
[写真11](マウスカーソルを画像の上に!)
white_led11.jpg
  • 「改良型豪華V6仕様」をハイビームとロービームに計4個組み込んだ、超豪華フルバージョン(?)です。(写真11)
  • 「お前はハイビームか?」というくらいの明るさです。
    (ちょっと大げさですが)
  • ハイビームもHID化することも考えましたが、必要な時に必要な明るさで、瞬時に光ってくれないと危険なため、交換しないことにしました。
    (このままでも十分HIDっぽいですし・・・)
  • これでやっと「顔面蒼白」になりました。

 一から基板を作ったり、超高密度集積をしたりと、作業性とコストを考えない、もの凄く細かな作業になってしまいました。いろいろハプニングはありましたが、何とか市販製品より良いものができたのではないかと思います。

 職人は言っています。
  「もう、こんな細け~作業は二度としたくねぇ」0xF9C7

[おまけ3] ~「豪華V6フラッシュライト」の紹介~

 先日、秋葉原を散策していたら、光源に高輝度白色LEDを用いたフラッシュライト(懐中電灯)を発見しました。

 これまでLEDを3個使ったものは見たことがありましたが、今回発見したものはLEDを6個も使っています。「改良型豪華V6仕様」と意匠がとてもよく似ていたので、思わず衝動買いしてしまいました。

[写真12]
white_led12.jpg
  • 秋葉原で発見したLEDフラッシュライトです。(写真12)
  • その名も「スーパーLEDライト」。単3乾電池2本で約25,000時間も点灯させることができます。
  • 価格は、2,680円でした。
 
[写真13]
white_led13.jpg
  • フラッシュライトを点灯させたところです。(写真13)
  • 「改良型豪華V6仕様」とそっくりです。
  • 見てお分かりのとおり、太陽光の下でも、直視できないくらい非常に明るいです。

[おまけ5] ~「人マネは割に合わない」の巻~

 その後、工房の“とある常連さん”からの情報により、某オークションにて、工房の作品に酷似した「商品」が競売に掛けられていることが分かりました。

 LEDの配置といい、基板の作りといい、ステンレステープをリフレクターとして使っているところといい、どう見ても工房の作品をパクっているとしか思えません。中には、わざわざ設計図まで起こして、ご丁寧に工業所有権まで申請しちゃっているヤカラまでいます。
(ここまで他人のフンドシで勝負できるというか、商魂たくましいヤカラがいるとは、呆れて物も言えません・・・)0xF9AC

 しかも、物珍しさからか、高値が高値を呼んで、部品原価を知っている人からみると信じられないような値段(2個セットで10,000円オーバー)で取り引きされていました。

 しかし、悪いことはできないものです。そのうち、同じココロザシのヤカラ達がこぞって参入し、市場はたちまち供給過剰状態となり、価格は一気に暴落です。
(末期には、表から見るとちゃんと作られていそうですが、裏から見るとガビガビの手配線で、いまにも壊れそうな「粗悪品」まで登場していました)0xF9AC

 さらに、追い打ちを掛けるように、LEDの市場性に気が付いたメーカーさん達が、本格的に参入してきました。こうなったら、もう目も当てられません。生産性の悪い手作り商品など、一気に駆逐されてしまいました。いまではオークションに出品しても、見向きもされていません。
(果たして、工業所有権の取得に掛かった費用が回収できたのかどうか、ヒト事ながら心配です)

 もともと、こうなることは予想していました。というか、こうなることを待っていました。これはもう後日談になりますが、実は“とあるメーカーさん”から工房の作品の提供を求められ、密かにサンプル品を供出していたのでした。
(あれっ、もしかして市場崩壊を早めちゃった?)(てへっ)0xF9CD

 ということで、工房で紹介している作品は、もともと趣味で作っているものですし、メーカーさんが本腰を入れて参入してきたらひとたまりない訳ですから、人のマネして小遣い稼ぎをしようなどという、浅はかで浅ましい考えは持ってはいけないのです。

 職人の志としては、「どれだけ他人が思い付かないような新しいものを、先んじて作れるか」、「どれだけ他人が作れないようなもの(他人とは違うもの)を、工夫して作れるか」、というところにあるのです。
(えっへん)0xF9C6

[おまけ6] ~「豪華V6仕様2003年モデル」の製作~

 一部のモニターさん(モルモットとも言う)で、LEDが突如点灯しなくなるという不具合が発生しました。不良品を掴まされたなどと思われたら、職人の意地が許しません! さっそく改良版を製作してみました。その名も「豪華V6仕様2003年モデル」です。

[写真14]
white_led14.jpg
  • 「豪華V6仕様2003年モデル」です。(写真14)
  • 主な改良点は以下の通り。
    1. CRD(定電流ダイオード)を採用することにより、瞬間的な高電圧時の耐性を確保し、さらなる長寿命化を実現。(おそらく)
    2. 超高輝度広指向角白色LED(NSPW510BS)を採用することにより、広い角度からの視認性を向上。(指向角20°→50°)
    3. ベース基盤(丸形)の切削方法を改善し、製作時間の短縮を実現。(作業が少し楽に)
 
[写真15]
white_led15.jpg
  • 量産してみました。(写真15)
  • 量産といっても、1つ1つ丹念に作っているので、休日の午後、8個程度作るのがやっとです。

 長期耐久テストをやった訳ではないので、どれだけ改良された分かりませんが、選ばれしモルモットの皆さん、モニター、またよろしくお願いしま~す。0xF9C7

[おまけ7] ~「豪華V6仕様2004年モデル」の製作~

 日亜化学さんから、指向角の広い、新しいタイプの素子が発売されました。さっそく使ってみることにしました。

[写真16]
white_led16.jpg
  • (写真16上)は、広く一般に使われているφ5mmの砲弾型ダイオード(写真は、NSPW510BS)です。
  • (写真16下)は、今回使用したフラットタイプのダイオード「NSPWF50BS」です。
  • 発光部の大きさは、4.6mm(W)×2mm(H)×5mm(D)です。
  • 輝度は少し低くなってしまいますが、指向角が140/120°と広く、幅広い範囲を照らすことができます。
     
    品名光度半値角順電圧順電流
    NSPW510BS1,800mcd50°3.6V20mA
    NSPWF50BS300mcd140/120°
 
[写真17]
white_led17.jpg
  • 作成した「豪華V6仕様2004年モデル」です。(写真17)
 
[写真18]
white_led18.jpg
  • 「2003年モデル」(写真18左)と「2004年モデル」(写真18右)との比較です。

 なんとなく光り方が違うのが分かりますでしょうか。「2004年モデル」では、ブラックアウトしたリフレクターの部分まで光が広がっています。素子を変えるだけでこれだけ効果があるのですね。

 ちなみに、撮影条件は両方とも同じ(F2.8×15')にしてあります。どこぞのHPのように、やたらとシャッター速度を遅くして、見かけ以上に明るくするなどというセコいことはしていません。0xF9CA

 ということで、日々改良を続ける「手仕事にっぽん」の職人でした。0xF9C6

  
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